APAA(アジア弁理士協会)クアラルンプール総会の参加レポート

11月に開催されたAPAA(Asian Patent Attorneys Association)クアラルンプール総会に参加してきました。本記事では、APAAの概要や会期中の主要イベント、現地で得られた知見についてご紹介します。

APAAとは

APAAは主にアジア圏の弁理士が集まる国際会議であり、日本・韓国・台湾・インドなどアジア圏の弁理士を中心に、欧州・北米・南米からも多数の専門家(弁理士・弁護士)が参加します。

世界各国の弁理士が集まる国際会議としては、APAAのほかにINTA(国際商標協会)、AIPPI(国際知的財産保護協会)、FICPI(国際弁理士連盟)などがありますが、APAAは年会費・参加費が比較的良心的で、かつネットワーキングの機会が豊富な点が特徴となります。

APAAは、外国事務所との新規関係構築だけでなく、実務情報の交換や最新の法改正トピックの共有ができる場として、多くの弁理士にとって重要な国際会議となっています。

総会のスケジュール概要

今回の総会は次のような日程で進行しました。

  • Day 1:準備日(一般向けイベントなし、各事務所のレセプション開催)
  • Day 2:開会式
  • Day 3:カルチャーナイト
  • Day 4:エクスカーション(現地ツアーやゴルフなど)
  • Day 5:晩餐会(Gala Dinner)

総会期間内では、特許・商標などの法域ごとに設置された委員会による専門的な議論も行われます。APAAの日本部会にも各法域の委員会が存在し、委員会所属の弁理士により最新知財トピックについての発表が行われます。

外国事務所とのミーティング

総会期間中、参加者の多くは日中に他国弁理士との個別ミーティングを行います。事務所間での相互紹介、各国の最新実務動向の共有、共同案件の相談など、リアルなコミュニケーションの場となります。

今回の参加では、弊所は、15か所以上の外国事務所(主に、東南アジア、韓国、欧州、米国、インド、南米など)とのミーティングを事前にアレンジし、積極的な意見交換を行いました。

外国事務所とのミーティングを通じて、AI・ソフトウェア関連の特許動向、商標審査の最新事情、国別の手続運用の変化など、実務に直結する情報を多く得られた点が大きな収穫となりました。

主なイベント

開会式

総会の正式なスタートを告げるイベントで、会場の熱気と規模からAPAAの大きさを実感します。

カルチャーナイト

各国の伝統芸能や食文化を楽しめる交流イベント。リラックスした雰囲気の中で、自然に会話が生まれる良い場となります。

エクスカーション(マラッカ観光)

今回のエクスカーションでは、ユネスコ世界文化遺産に登録されているマラッカを訪問しました。

早朝6時半にKLCC(クアラルンプール・コンベンションセンター)に集合し、バスで2時間ほど移動。解散は17時頃となり、約11時間のツアーとなりました。

歴史的建造物や街並みを巡りながら、他国弁理士とカジュアルに交流できた点が大きな魅力です。実務の場ではオンラインでのやり取り(メールやビデオ通話)が中心ですが、現地でのオフライン交流はやはり「距離が縮まる」実感があります。

晩餐会(Gala Dinner)

総会の締めくくりとなる華やかなイベントです。多くの参加者との再会・交流の場となり、国際会議に参加している実感を強く持てるハイライトでもあります。

クアラルンプールの街の印象

クアラルンプールは高層ビル群が林立する近代都市で、キャッシュレス決済が広く普及しています。

物価は体感では日本と大きく変わらず、支払はクレジットカード(特にWiseカード)が便利でした。移動手段としては Grab(ライドシェアアプリ)が扱いやすかった印象です。

マレーシアはイスラム教を国教としつつ、マレー系・中華系・インド系が共存する多民族国家であり、英語が広く通用します。実際、特許事務所での共通語も英語で、明細書も英語での作成が一般的とのことでした。

会場周辺のBukit Bintang(ブキッ・ビンタン)には大型モール(Pavilion)や夜市があり、ドリアンの屋台も多数見かけました(翌日のミーティングを考慮してドリアンは遠慮しました…)。

今回の参加を通じて感じたこと

独立後初めてのAPAAの参加でしたが、長年の知人である外国弁理士と対面で再会できたことが大きな喜びでした。

また、多くの外国弁理士と交流し、新たな連携のきっかけを得られた点も今回の大きな成果です。

弁理士業は、国内だけで完結する仕事ではありません。顧客の事業が海外へ展開する場合には、国内に加えて海外でも知的財産権を取得し、権利網を構築することが求められます。

その際、日本弁理士は外国弁理士との緊密な連携を通じ、各国の制度に適した形で効率的に権利取得を進める役割を担います。

特に昨今は円安の影響により、外国出願コストの見直しや戦略的な国選定が重要になっており、日本弁理士が適切な助言と調整を行う必要性は一層高まっています。

今回のAPAA参加を通じて、IPStartとしても国際ネットワークをさらに強化し、海外における知的財産の保護をより高いレベルで支援できるよう、今後も取り組んでまいります。

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