期間徒過後の救済規定に係る回復要件の変更(2023.4.1-)

先日特許庁よりアナウンスがありましたように、法改正により期間徒過後の救済規定に係る回復要件が2023.4.1から変更となります。無限責任となる弁理士にとっては実務的な影響が大きいため今回ご紹介いたします。

具体的には、救済規定の回復要件が「正当な理由(due care)」→「故意ではない基準(unintentional)」に変更となります。

今回対象となる法定期限は主に以下となります。

  • 外国語書面出願の翻訳文提出期限
  • 国内優先権主張期限
  • パリ優先権主張期限
  • 審査請求期限
  • 特許料(割増特許料*)の追納期限
  • PCT国内移行時の翻訳文提出期限
  • 特許管理人選任期限
  • 商標権(防護標章登録含む。)の更新登録の申請期限
  • 後期分割登録料(割増登録料)の追納期限

*実用新案登録料、意匠登録料を含む。

従来では、法定期限日までに出願審査請求書等の庁書類を提出できない場合には、期間徒過に関する正当な理由(due care)がないと救済できない規定となっていました。

「正当な理由」の具体例は以下のものとなっておりました(期間徒過後の救済規定に係るガイドライ)。

• 突発的な入院による代理人の不在
• 計画的な入院による代理人の不在
• 出願人等が法人の場合における事故等による手続担当者の不在
• 出願人等が法人の場合における定年退職による手続担当者の不在
• 地震による社屋の倒壊
• 新社屋建設のための旧社屋の取り壊し
• 雷による停電のためのオンライン手続不能
• 計画停電によるオンライン手続不能
• システム不具合による誤った期限の告知
• システムへのデータの入力ミスによる誤った期限の告知

上記の具体例を見てもかなり厳しめの要件であることが理解できるかと思います(汗)。

一方で、2023/4/1から適用される「故意ではない基準」の要件では、出願人が期限を徒過したことが単に故意ではないことを回復理由書において示せばよいこととなります。

回復理由の一例は以下となります(特許庁の様式見本例を抜粋)。

不注意により審査請求期限を失念しており、所定の期間内に手続をすることができませんでした。その後、令和●年●月●日に期限が徒過していることに気がつき、今般、手続をしました。所定の期間内に手続ができなかったのは、故意によるものではありません。尚、出願審査の請求を遅延させることを目的とするものではありません。

その一方で、法定期限徒過の回復要件が緩やかとなるものの、回復理由書と共に回復手数料を特許庁に支払うことが必要となります。

  • 特許 212,100円
  • 実用新案 21,800円
  • 意匠 24,500円
  • 商標 86,400円

回復理由書の提出期限は、期間徒過後の手続ができるようになった日から2月以内且つ手続期間の経過後1年以内となります(商標に関しては6月以内)。

一方で、優先権主張期限の期間徒過に関しては、優先権主張期限日から2月以内に出願を行う必要があります。また、優先権主張期限の期間徒過の救済を請求したJP国内移行案件に関しては、国内書面提出期限日(翻訳文提出特例期限日)より1月以内に回復理由書を提出する必要があります(外内案件等では要注意となります)。

今回の回復要件の変更に伴い、受理官庁(US)を経由したPCT出願(unintentional基準)→JP国内移行(due care基準)といった回復要件の基準の違いによって生じる問題が解消されることとなります。つまり、故意ではない基準(unintentional)が日本において適用されるため、PCT経由での優先権主張期限の期間徒過の回復が日本でも容易となります。

PCT出願の優先権の回復については以下をご参照ください。

https://www.jpo.go.jp/system/patent/pct/tetuzuki/yusenken_kaifuku.html

各国の回復要件及び回復手数料については以下をご参照ください。

https://www.wipo.int/pct/en/texts/restoration.html

参考資料

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/kyusai_method2.html

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