2023年における世界の知財統計レポートがWIPO(世界知的所有権機関)より発表されていましたので、簡単に本レポートの概要をご紹介したいと思います(本記事は、WIPO IP Facts and Figures 2024の内容に基づいて作成されております)。
世界の特許、実用新案、商標、意匠の出願件数
2023年における世界の特許、実用新案、商標、意匠の出願件数は以下となります。
- 特許の出願件数は、約355万件(前年比2.7%増↑)
- 実用新案登録出願の出願件数は、約313万件(前年比3.9%増↑)
- 商標登録出願の件数*は、約1523万件(前年比2.0%減↓)
- 意匠登録出願の件数**は、約152万件(前年比2.8%増↑)
*商標登録出願の件数は、指定商品/役務の区分(class)の数に基づいてカウントされています。
**意匠登録出願の件数は、意匠の数に基づいてカウントされています(※多意匠一出願の国があるため)。

出願地域の傾向
2023年における出願地域の傾向は以下となります。
- 世界の特許出願件数のうち約68.7%はアジアから出願されている。北米は17.8%、欧州は10.3%
- 世界の実用新案登録出願件数のうち約98.8%はアジアから出願されている。欧州は1.0%
- 世界の商標登録出願件数のうち66.7%はアジアから出願されている。欧州は17.2%
- 世界の意匠登録出願件数のうち69.0%はアジアから出願されている。欧州は23.5%
2013年時点では、世界の特許出願件数のうちアジア地域の占める割合は58.4%でした。
アジア地域のうち中国、日本、韓国の三カ国のシェアは91.1%となります。

国別の特許出願件数の分布
上位五庁(中国、米国、日本、韓国、欧州特許庁)における特許出願件数の割合は以下となります。

中国出願の件数が全体の47.2%を占めております。次に、米国出願(16.8%)、日本出願(8.4%)、韓国(6.8%)、欧州特許庁(5.6%)の順番となります。
各国出願人の特許出願件数
各国出願人の特許出願件数は以下となります。

中国出願人が前年と同様に最も特許出願件数が多くなります(約164万件。前年比3.6%増↑)。
米国出願人は世界第二位の特許出願件数となります(約51.8万件。前年比2.5%増↑)
日本出願人は世界第三位の特許出願件数となります*(41.4万件、前年比2.2%微増↑)
*日本国特許庁が発行する特許庁ステータスレポート2024では、2023年度における日本出願人による日本特許出願件数は22.4万件となっています。即ち、41.4万件-22.4万件=19万件が日本出願人による外国出願の件数であると推定されます。
また、昨年度に引き続きインド出願人の特許出願件数の増加が顕著となっております(前年比15.7%増↑)。一方、上位10カ国の出願人のうちフランス出願人の特許出願件数は減少(前年比3.2%減↓)しました。
次に、中位国の出願人の特許出願件数の傾向は以下となります。

ブラジル(前年比5.2%増↑)、インドネシア(前年比7.5%増↑)、アルジェリア(前年比192%増↑)の出願人の特許出願件数が大きく伸びていることがわかります。
世界の特許権、実用新案権、意匠権、商標権の数
2023年における世界の有効な特許権、実用新案権、商標権、意匠権、地理的表示の件数は以下となります。
- 特許権の総数は、約1860万件(前年比7.6%増↑)
- 実用新案権の総数は、約1240万件(前年比11.5%増↑)
- 商標権の総数は、約8820万件(前年比6.4%増↑)
- 意匠権の総数は、約610万件(前年比10.5%増↑)
- 地理的表示の総数は、約58,600件

登録数の上位国
特許権の登録数(総数1860万件)の上位国は以下となります。
- 中国:約500万件
- 米国:約350万件
- 日本:約210万件
商標権の登録数(総数8820万件)の上位国は以下となります。
- 中国:4610万件
- 米国:320万件
- インド:320万件
意匠権の登録数(総数610万件)の上位国は以下となります。
- 中国:320万件
- 米国:42万件
- 韓国:41万件
中国特許庁での商標権・意匠権の登録件数が突出して多いことが分かります(世界の登録数の半数以上が中国の商標権・意匠権となる)。
発明の技術分野
五庁に特許出願された発明の技術分野の傾向は以下となります。

全体的にはコンピュータ技術(ソフトウェア分野)の出願件数が最も多いことが分かります。
- 中国:1.コンピュータ技術、2.測定、3.電気機器/エネルギーの順番
- 米国:1.コンピュータ技術、2.医療技術、3.デジタル通信の順番
- 日本:1.電気機器/エネルギー、2.輸送機器、3.コンピュータ技術の順番
- ドイツ:1.輸送機器、2.電気機器/エネルギー、3.測定の順番
- 韓国:1.コンピュータ技術、2.電気機器/エネルギー、3.半導体の順番
米国ではデジタル通信、医療技術の特許出願も多い点が注目に値します。日本ではコンピュータ技術(ソフトウェア)よりも電気機器や輸送機器の出願がメインであることが分かります。ドイツでは、コンピュータ技術の出願が少なく、輸送機器の出願がメインとなります。韓国では半導体分野の出願が多い点が注目に値します。
※本記事は、WIPO IP Facts and Figures 2024の情報に基づいて作成されております。