令和8年度 中小企業等海外出願支援事業補助金について

令和8年度の「中小企業等海外出願支援事業補助金」についてご紹介します。

中小企業等海外出願支援事業補助金は、海外での事業展開等を予定している中小企業等に対して、外国出願に要する費用の一部を補助する制度です。

日本で特許権、実用新案権、意匠権又は商標権を取得していても、その権利の効力は原則として日本国内に限られます。そのため、海外で製品・サービスを展開する場合や、海外での模倣品・模倣ブランド対策を行う場合には、外国においても権利を取得しておくことが重要です。

一方で、外国出願では、外国特許庁への庁費用、現地代理人費用、国内代理人費用、翻訳費用等が発生するため、費用負担が大きくなりやすいという問題があります。

本補助金を活用することで、外国出願に要する費用の一部について補助を受けられる可能性があります。

令和8年度の主な応募受付期間

令和8年度の外国出願補助金・助成金については、INPITと、各都道府県中小企業支援センター等(東京都、神奈川県など)でそれぞれ応募受付期間が異なります。

主な応募受付期間は、以下のとおりです。

制度主な応募受付期間
INPIT外国出願補助金第1回:2025年12月1日~12月22日、第2回:2026年3月2日~3月23日、第3回:2026年6月8日~6月29日、第4回:2026年9月7日~9月28日
東京都 外国特許出願費用助成金第1回:2026年5月8日~5月22日、第2回:2026年10月1日~10月16日
神奈川県 中小企業等海外出願支援事業2026年6月12日17時必着

INPIT外国出願補助金は、令和8年度に複数回の公募が予定されています。一方、東京都や神奈川県の助成金は、受付期間が限られているため、申請を検討している場合には早めに準備を進める必要があります。

特に、外国出願補助金の申請では、外国代理人からの見積書、国内代理人の見積書、出願内容に関する資料、事業計画に関する資料等が必要となることがあります。

そのため、申請期限の直前に準備を始めるのではなく、余裕をもって弁理士に相談することが重要です。

なお、応募受付期間や申請方法は変更される可能性がありますので、申請にあたっては必ず各実施機関の最新情報をご確認ください。

補助率・補助上限額

令和8年度の中小企業等海外出願支援事業では、補助対象経費の2分の1以内について補助を受けることができます。

補助上限額は、1企業あたり300万円以内です。

案件ごとの補助上限額は、以下のとおりです。

出願の種類補助上限額
特許出願150万円
実用新案登録出願60万円
意匠登録出願60万円
商標登録出願60万円
抜け駆け対策を目的とする商標出願30万円

例えば、米国、欧州、中国、韓国、台湾等の複数国に特許出願を行う場合、出願段階だけでも相当額の費用が必要となることがあります。そのような場合に、本補助金を活用することで、外国出願費用の負担を軽減できる可能性があります。

補助対象となる主な費用

補助対象となる主な費用は、以下のとおりです。

  • 外国特許庁等への出願手数料
  • 現地代理人費用
  • 国内代理人費用
  • 翻訳費用

ただし、消費税、付加価値税、登録料、年金、交付決定前に発生した費用等は補助対象外となる場合があります。

特に、補助金の交付決定前に外国出願を正式に依頼してしまうと、当該費用が補助対象外となる可能性があるため注意が必要です。

見積金額の留意事項

外国出願補助金を利用する場合には、申請時の見積金額と、実際に発生する経費が異なる可能性がある点にも注意が必要です。

外国出願では、現地代理人費用や外国特許庁への庁費用が外貨建てで発生することが多く、申請時点の見積金額と実際の支払時点の円換算額が異なる場合があります。

特に、申請後に円安が進行した場合には、実際の支払時における円換算額が、申請時の見積金額を上回る可能性があります。

この場合であっても、補助金額は、原則として交付決定時の金額を上限として取り扱われるため、実際の経費が見積金額を上回ったとしても、補助金額が当然に増額されるわけではありません。

その結果、補助率2分の1の制度であっても、円安により増加した部分については自己負担となり、実質的な補助割合が2分の1を下回ることがあります。

したがって、外国出願補助金を申請する際には、単に申請時点の為替レートで見積書を作成するのではなく、申請から実際の支払までの期間における為替変動リスクを考慮し、ある程度余裕を持った為替レートで見積書を作成することが重要です。

特に、米国、欧州、中国、韓国、台湾等の複数国に出願する場合には、外貨建て費用の割合が大きくなるため、為替変動による影響も大きくなります。外国出願補助金の申請を検討する場合には、外国代理人から見積を取得する際に、為替レートの設定にも注意する必要があります。

補助対象となる主な外国出願

補助対象となる外国出願としては、例えば以下のようなものがあります。

  • パリ優先権に基づく外国特許出願
  • パリ優先権に基づく外国実用新案登録出願
  • パリ優先権に基づく外国意匠登録出願
  • PCT国際出願に基づく各国国内移行
  • ハーグ協定に基づく意匠の国際出願
  • マドリッド協定議定書に基づく商標の国際登録出願
  • 外国への直接商標出願

特許、実用新案及び意匠については、原則として、日本国特許庁への出願を基礎として優先権主張を伴う外国出願が補助対象となります。

一方、商標については、優先権主張を伴わない外国出願も補助対象となり得ます。

PCT国際出願の費用は補助対象となるか

PCT国際出願に関する費用が補助対象となるかどうかは、制度によって取扱いが異なります。

INPIT外国出願補助金や、多くの都道府県等中小企業支援センターが実施する中小企業等海外出願支援事業では、PCT国際出願自体の費用ではなく、PCT国際出願に基づく各国・地域への国内移行費用が補助対象となるのが一般的です。

すなわち、PCT国際出願の国際段階における国際出願手数料、取扱手数料、調査手数料、送付手数料、予備審査手数料等は、補助対象外とされることが多いです。

一方、PCT国際出願後に、米国、欧州、中国、韓国等の各国・地域へ国内移行する際の庁費用、現地代理人費用、国内代理人費用、翻訳費用等は、補助対象となり得ます。

この点は、PCT出願を利用する企業にとって重要な注意点です。

東京都・神奈川県の助成金について

外国出願に関する補助金・助成金は、INPITが実施する制度だけでなく、各都道府県等の支援機関が実施する制度もあります。

例えば、東京都内の中小企業者等については、東京都知的財産総合センターが実施する「外国特許出願費用助成金」が利用候補となります。

東京都の制度では、外国特許出願から中間手続までに要する費用が助成対象とされており、助成率は2分の1以内、助成限度額は400万円とされています。ただし、出願に要する経費のみの場合は、助成限度額は300万円とされています。

また、東京都の制度では、一定条件の下で、PCT国際出願段階の費用も助成対象となり得ます。この点は、全国版や多くの地域実施機関による補助金とは異なる特徴です。

一方、神奈川県内の中小企業者等については、公益財団法人神奈川産業振興センター、いわゆるKIPが実施する「神奈川県中小企業等海外出願支援事業」も利用候補となります。

神奈川県の制度では、補助率は2分の1以内、1申請者あたりの上限額は300万円、案件ごとの上限額は、特許150万円、実用新案・意匠・商標60万円、抜け駆け対策商標30万円とされています。

神奈川県の制度は、PCT国際出願に基づく各指定国への国内移行費用は補助対象となる一方、PCT国際出願の国際段階費用は補助対象外とされています。この点、PCT国際出願段階の費用も一定条件下で助成対象となり得る東京都の制度とは取扱いが異なります。

東京都・神奈川県の助成金については、それぞれ申請要件、対象経費、受付期間、申請方法が異なるため、利用を検討する場合には、各制度の募集要項を確認することが重要です。

令和7年度との主な違い

令和7年度と比較すると、補助率や出願手続に関する補助上限額については、大きな変更はないものと思われます。

すなわち、補助率2分の1、1企業あたり300万円、特許150万円、実用新案・意匠・商標60万円、抜け駆け対策商標30万円という基本的な枠組みは、令和8年度も維持されています。

一方で、令和8年度では、INPIT外国出願補助金の公募時期が早期化・複数回化している点が特徴的です。

令和7年度のINPIT外国出願補助金では、出願手続補助の公募は主に第1回・第2回として案内されていましたが、令和8年度は複数回の公募が予定されており、申請機会がより分散されています。

また、令和8年度は、特許出願に関する中間手続補助も設けられています。中間手続補助では、審査請求や拒絶理由通知への応答等について、一定の要件を満たす場合に補助を受けられる可能性があります。

さらに、東京都の外国特許出願費用助成金のように、地域によっては全国版とは異なる助成対象経費や助成上限額が設定されている場合があります。令和8年度の補助金・助成金を検討する際には、全国版、東京都版、神奈川県版など、利用可能な制度を比較したうえで検討することが重要です。

外国出願のスケジュール

外国出願では、出願期限の管理が非常に重要です。

例えば、パリ優先権を主張して外国出願を行う場合、特許及び実用新案については、原則として最初の出願日から12か月以内に外国出願を行う必要があります。意匠については、原則として最初の出願日から6か月以内に外国出願を行う必要があります。

また、PCT国際出願に基づく各国国内移行については、多くの国・地域で優先日から30か月又は31か月以内に国内移行手続を行う必要があります。

補助金の採択を待っている間に、優先権主張期限やPCT国内移行期限が到来してしまう場合があります。一方で、交付決定前に外国出願を正式発注してしまうと、補助対象外となる可能性もあります。

そのため、外国出願と補助金申請を両立させるためには、早い段階で、出願国、出願ルート、見積金額、補助金申請先、申請スケジュールを整理することが重要です。

特に、外国代理人からの見積取得や翻訳の準備には時間を要することがありますので、外国出願補助金の利用を検討している場合には、早めに弁理士へ相談することをお勧めします。

IPStart国際特許事務所のサポート

IPStart国際特許事務所では、外国出願に関するご相談を承っております。

弊所では、米国、欧州、中国、韓国、台湾、ASEAN諸国等を含む各国代理人と連携し、外国特許出願、PCT国内移行、マドプロ商標出願、ハーグ意匠国際出願等に対応しております。

また、外国出願費用について、出願段階だけでなく、審査請求、中間処理、登録までを見据えた見積作成にも力を入れております。必要に応じて、各国代理人との費用交渉にも対応いたします。

外国出願補助金を活用することで、海外での権利取得に要する費用負担を軽減できる可能性があります。

外国出願や海外出願補助金の活用をご検討中の中小企業・スタートアップ企業様は、ぜひ一度、IPStart国際特許事務所までご相談ください。

参考情報

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