2021年における世界の知財活動レポートがWIPO(世界知的所有権機関)より発表されていましたので、簡単に本レポートの概要をご紹介したいと思います(本記事は、WIPO IP Facts and Figures 2022の内容に基づいて作成されております)。
世界の特許、実用新案、商標、意匠の出願件数
2021年における世界の特許、実用新案、商標、意匠の出願件数は以下となります。
- 特許の出願件数は、約340万件(前年比3.6%増↑)
- 実用新案登録出願の出願件数は、約290万件(前年比2.5％減↓)
- 商標登録出願の件数*は、約1810万件(前年比5.5%増↑)
- 意匠登録出願の件数**は、約150万件(前年比9.2%増↑)
*商標登録出願の件数は、指定商品/役務の区分(class)の数に基づく。
**意匠登録出願の件数は、意匠の数に基づく(※多意匠一出願の国があるため)。
出願地域の傾向
2021年における出願地域の傾向は以下となります。
- 世界の特許出願件数のうち約67.6％はアジアから出願されている。北米は18.5%、欧州は10.5%
- 世界の実用新案登録出願件数のうち約98.4%はアジアから出願されている。欧州は1.2%
- 世界の商標登録出願件数のうち69.7%はアジアから出願されている。欧州は15.7％、北米5.9%、南米は5.7%
- 世界の意匠登録出願件数のうち69.3％はアジアから出願されている。欧州は23.3％、北米は4.6％
尚、2011年時点では、世界の特許出願件数のうちアジア地域の占める割合は54.6％でした(54.6%(2011年)→67.6%(2021年))。
国別の特許出願件数の分布
上位五庁(中国、米国、日本、韓国、欧州特許庁)における特許出願件数の割合は以下となります。
中国出願の件数が全体の46.6％を占めております。次に米国出願(17.4%)、日本出願(8.5%)となります。
特許出願件数の上位国
特許出願件数の上位国(広域特許機関を含む。)は以下となります。
中国が前年と同様に最も出願件数が多い国となっております(158万件。前年比5.9％増)。
日本は世界第三位の出願件数を維持しています(28.9万件、前年比0.3%増)。
また、豪州、インド、カナダの出願件数の増加が顕著となっております。一方で、ドイツの出願件数は5.7％減と大きく落ち込みましたが、欧州特許出願の件数が4.7％増となっていることを踏まえると、ドイツ国内出願よりも欧州特許出願を選択する出願人が増えたものと考えられます。また、ロシアの出願件数は11.5%減と大きく減少しております。
世界の特許権、実用新案権、意匠権、商標権の数
2021年における世界の有効な特許権、実用新案権、商標権、意匠権の数は以下となります。
- 特許権の総数は、約1650万件(前年比4.2%増↑)
- 実用新案権の総数は、約950万件(前年比31.4%増↑)
- 商標権の総数は、約7370万件(前年比14.3%増↑)
- 意匠権の総数は、約530万件(前年比10.9％増↑)
- 地理的表示の総数は、約63600件
登録数の上位国
特許権の登録数の上位国は以下となります。
- 中国：約360万件
- 米国：約330万件
- 日本：約200万件
商標権の登録数の上位国は以下となります。
- 中国：3720万件
- 米国：280万件
- インド：260万件
意匠権の登録数の上位国は以下となります。
- 中国：260万件
- 韓国：38.8万件
- 米国：38.1万件
発明の技術分野
五庁に特許出願された発明の技術分野の傾向は以下となります。
全体的にはコンピュータ技術(ソフトウェア分野)の出願件数が最も多いことが分かります。
- 中国では、1.コンピュータ技術、2.測定、3.電気機器/エネルギーの技術分野の特許出願が多い。
- 米国では、1.コンピュータ技術、2.医療技術、3.デジタル通信の技術分野での特許出願が多い。
- 日本では、1.電気機器/エネルギー、2.輸送機器、３.コンピュータ技術の技術分野での特許出願が多い。
特に、米国では医療技術の特許出願が多い点が注目に値します。また、日本ではコンピュータ技術(ソフトウェア)よりも電気機器や輸送機器等のハードウェア関連の出願がメインであることが分かります(ドイツも似たような傾向となっています)。
※本記事は、WIPO IP Facts and Figures 2022の情報に基づいて作成されております。
