2022年12月16日付けで経産省のWEB3.0政策推進室より「Web3.0事業環境整備の考え方」についての資料が提供されておりましたので、当サイトにおいても簡単にご紹介いたします。
https://www.meti.go.jp/shingikai/sankoshin/shin_kijiku/pdf/010_03_01.pdf
WEB3.0に関する基礎知識を得るだけでなく政府の今後の対応方針を予測する上でも本資料は有用であると思いました。
コロナ禍でのマネタリーベースの増加に伴う不換紙幣に対する信用低下やビットコイン(BTC)のマイニング報酬の半減期に関連した周期的バブル相場が相俟って、WEB3.0の一大ブームが2021年に世界規模で巻き起こったことは記憶に新しいところかと思います。
WEB2.0に続くWEB3.0は価値のインターネットとして今後大きな発展を遂げることが現在期待されています。WEB3.0では、通貨、債券、株式、不動産、アート等のあらゆる価値を持つものがボーダーレス且つ仲介者なしにブロックチェーンネットワーク上で記録・保存・交換されるため、WEB3.0は金融の仕組みを大きく変えるポテンシャルを持っているわけです。
その一方で、本資料に記載されているように、ブロックチェーンには以下に示す技術課題が存在しております。
- スケーラビリティ
- セキュリティ
- 匿名性とプライバシー
- オラクル問題
- 電力消費問題
特に、BTCマイニングによる莫大な電力消費が世界的に大きな環境問題に発展しており、これが将来的にも大きな課題となるように思われます。一方で、BTCがコモディティとして位置付けられている理由が生産コストであり、その生産コストがBTCのコモディティとしての価値の裏付けとされているといった意見もあります。また、ハッシュレートの増加に伴いBTCネットワークの安全性が確保されているといった側面もあります。不換紙幣と対極にあるBTCの存在が今後のWEB3.0の成否を握っている以上、イーサリアムと同様にBTCの合意形成の仕組みもPoW(Proof of Work)からPoS(Proof of Stake)に変更するべきであるといった主張もなかなか一筋縄ではいかないように思われます。
また、WEB3.0関連特許としましては、現行のIT系の特許クレーム(特許請求の範囲)で焦点となっている以下の事項に留意する必要があるかと思います。
- 複数主体(ユーザ等を含む複数の主体によって実行されるシステム等)
- 域外適用(複数の主体の一部が国外に配置されているシステム)
- 侵害立証の容易性(内部処理を含むクレーム構成)
- 出願国の選定(WEB3.0関連アプリはボーダーレスで実施される(例えば、DeFiやNFTプラットフォーム等))
この点において、ブロックチェーンネットワークは分散台帳を有する国内外の複数のノードにより構成されておりますので、WEB3.0関連特許でも域外適用や複数主体について考慮する必要がございます。つまり、ブロックチェーンネットワークを利用したシステムは、国外サーバ(特に、AWSやAzure等のクラウドサーバ)を含むシステムと同様の特許侵害に係る論点を抱えています。
その一方で、昨年の知財高裁の判決(ドワンゴ v. FC2 知財高判R4.7.20)において、プログラムクレームの直接侵害とユーザ端末クレームの間接侵害が認定された点は朗報ではございました。これはWEB2.0関連特許のお話ではありますが、WEB3.0関連特許も同様の結論となるかと思われます。
尚、システムクレームの域外適用の可否については別のドワンゴ事件に係る高裁判決が今後注目となります。本事件の地裁判決では、国外サーバを含むシステムの域外適用が否定されましたが、現在係属中の知財高裁では日本版アミカスブリーフ制度が初めて採用されるといった点でも現在注目されております(日経新聞記事参照)。
本事件と米国Blackberry事件(NTP v. RIM (Fed. Cir. 2005))との間の比較において様々な議論もございますが、本事件についてはまたご報告したいと思います。