知的財産分野における法律の改正案についての閣議決定(2023.3.10)

2023年3月10日に経産省よりアナウンスがあったように、知的財産分野の法律(主に、不正競争防止法(以下、不競法))の改正案が閣議決定されました。詳しい内容は、以下のリンクをご参照ください。

https://www.meti.go.jp/press/2022/03/20230310002/20230310002.html

本閣議決定の後に、衆議院及び参議院での国会審議を経て、両議院において法案が可決された後に改正法が成立することとなります。また、本改正法の施行期日については判明次第、今後お伝えする予定です。

主な改正内容は以下となります。

  • 登録可能な商標の拡充
    • コンセント制度の導入(同意書提出により他人の先行登録商標と類似する商標が登録可能となる)
    • 氏名を含む商標が他人の承諾なしに登録可能
    • 不正目的でない登録商標の使用行為を不正競争として扱わない(不競法の適用除外規定)
  • 意匠の新規性喪失の例外規定に係る証明書に関する要件緩和
  • デジタル空間(メタバース)における商品形態の模倣行為の防止
  • 営業秘密・限定提供データの保護強化
    • 限定提供データの定義の修正
    • 被侵害者の生産能力を超える損害についても損害賠償請求可能
  • インターネットによる送達制度
  • 書面手続きのデジタル化
    • 優先権証明書の電子ファイル又は写しが提出可能
    • マドプロ出願(Madrid e-Filing)における手数料の一括納付が可能
  • 審査請求料等の手数料減免制度の見直し(減免対象の件数制限)
  • 外国公務員贈賄に対する罰則強化・拡充
  • 日本企業が保有する営業秘密に係る不正競争行為(民事)が国外で行われた場合の裁判管轄権*

*現行の不競法では、国外犯に営業秘密侵害罪(刑事)を適用可能である点が規定されているものの(不競法第21条第7項)、国外において日本企業の営業秘密が侵害された場合に日本の裁判所に裁判管轄権があるかどうかは規定されていない。

目次

感想

今回の法改正では、商標出願におけるコンセント制度が導入される点や意匠の新規性喪失の例外規定に係る証明書の要件が緩和される点が実務的に大きな変更点となります。一方で、審査請求料等の減免対象となる件数の制限に関しては、中小スタートアップ企業の費用負担が増加するため、今後気になる事項ではございます。

また、メタバース空間上における商品形態の模倣行為が不正競争行為となるため、今後どのような事案が出てくるのかが興味深い所ではあります。

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