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令和5年における知的財産分野の法律の改正法の内容と施行期日について

不正競争防止法等の一部を改正する法律の施行期日につきまして進展がございましたので、今回記事にいたします。

改正法に関する以前の記事についてはこちらをご参照ください。

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法改正の具体的な条文につきましては以下の新旧対照条文をご参照ください。

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/hokaisei/sangyozaisan/document/fuseikyousou_2306/04.pdf

目次

令和6年1月1日より施行される事項

  •  優先権証明書のオンライン提出許容のための規定整備
  •  書面手続のデジタル化のための改正
  •  Madrid e-Filingによる商標の国際登録出願の手数料納付方法の見直し
  •  意匠の新規性喪失の例外規定の適用手続の要件緩和

1.優先権証明書のオンライン提出許容のための規定整備

従来ではデジタルアクセスシステム(DAS)が利用できない場合には優先権証明書の原本を提出する必要がありましたが、これからは優先権証明書の電子コピーをオンラインで提出することが可能となります。

ちなみに、現時点においてDASに参加している国は以下となります。https://www.jpo.go.jp/e/system/process/shutugan/yusen/das/index.html

2.書面手続のデジタル化のための改正

特許庁への申請書類及び特許庁からの送達書類がデジタル化されます。

特許庁への申請書類:新規性喪失の例外適用に係る証明書や特許権移転に係る申請書等をオンラインで提出することが可能となります(これらの書類のPDFファイルをオンラインで提出可能)。

特許庁からの送達書類:登録証や特許料領収書をオンラインで受領することが可能となります。

3.Madrid e-Filingによる商標の国際登録出願の手数料納付方法の見直し

従来のWIPOのポータルを通じたマドプロ電子出願(Madrid e-Filing)では、本国官庁手数料9000円を印紙等で日本特許庁に別途納付していましたが、これからは当該手数料をWIPOに納付することになります(オンライン上のクレジットカード決済又は銀行送金)。

e-Madridのポータルサイトは以下となります。

https://madrid.wipo.int/

4.意匠の新規性喪失の例外規定の適用手続の要件緩和

意匠登録を受ける権利を有する者の行為に起因して公開された意匠について、最先の公開の日のいずれかの公開行為について証明することで、その日以後に公開した同一又は類似の意匠についても新規性喪失の例外規定の適用が受けられるようになります。

このため、複数の公開行為の各々に対して証明書を作成する必要がなくなるため、証明書作成に要する手続的負担が軽減されることになります。

令和6年4月1日より施行される事項

  1.  不正競争防止法改正関連の措置事項
  2.  他人の氏名を含む商標に係る登録拒絶要件の見直し
  3.  商標におけるコンセント制度の導入
  4.  中小企業の特許に関する手数料の減免制度の見直し

5.不正競争防止法改正関連の措置事項

  • 他人の商品形態を模倣した商品を電気通信回線を通じて提供する行為(例えば、他人の商品形態を模倣した商品をメタバース上に提供する行為等)が不正競争となります。
  • 限定提供データの保護範囲が拡充されることになります(特に、営業秘密と限定提供データとの区別が明確化されると共に、秘密管理性を有する限定提供データに対する保護が明確化されます)。
  • 営業秘密の保護強化の観点から、国外において営業秘密(国内の事業者が保有するものであって、日本で管理されている営業秘密に限る。)に係る不正競争を行った者に対する訴え(特に民事訴訟)の日本の裁判管轄権や国外における営業秘密に係る不正競争に対する域外適用が明記されております。
  • 不正競争行為に対する損害額の推定規定(被侵害者の生産・販売能力超過分の損額額等)および技術上の営業秘密を使用する行為の推定規定が拡充されています。

6.他人の氏名を含む商標に係る登録拒絶要件の見直し

一定の知名度を有していない他人の氏名を含む商標については、出願人と当該他人の氏名との間に相当の関連性があると共に、当該出願人に不正の目的がない場合に限り、当該他人に対する承諾を得ずに商標登録を受けることが可能となります。

商標法第4条1項8号(改正)
他人の肖像若しくは他人の氏名(商標の使用をする商品又は役務の分野において需要者の間に広く認識されている氏名に限る。)若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)又は他人の氏名を含む商標であつて、政令で定める要件に該当しないもの

商標法施行令第1条(改正)
商標法第四条第一項第八号の政令で定める要件は、次の各号のいずれにも該当することとする。
一 商標に含まれる他人の氏名と商標登録出願人との間に相当の関連性があること。
二 商標登録出願人が不正の目的で商標登録を受けようとするものでないこと。

7.商標におけるコンセント制度の導入

留保型のコンセント制度が導入されることになります。即ち、出願人が引用商標権者(他人)からの承諾を受けており、当該商標に係る商品等と引用商標権者等の業務に係る商品等との間で混同が生じるおそれがない場合には、商標登録を受けることが可能となります。

商標法第4条4項(改正)
第1項第11号に該当する商標であつても、その商標登録出願人が、商標登録を受けることについて同号の他人の承諾を得ており、かつ、当該商標の使用をする商品又は役務と同号の他人の登録商標に係る商標権者、専用使用権者又は通常使用権者の業務に係る商品又は役務との間で混同を生ずるおそれがないものについては、同号の規定は、適用しない。

8.中小企業の特許に関する手数料の減免制度の見直し

中小企業等の出願審査請求料の減免申請件数に対して上限数が設定されます。上限数は、中小企業者以外の会社(即ち、大企業)の平均的な出願審査の請求の件数を勘案して経済産業省令で定める件数となります。

例えば、経済産業省令で定める上限数が180件である場合、中小企業Aの年間の審査請求料の減免申請数は180件までとなります。本上限数は、高い新産業創出能力が期待されるスタートアップ企業や大学・研究機関等に対しては適用されません。

コメント

令和6年1月1日より施行される事項は、主に手続きのDX化を推進するものとなります。

従来の法改正と比較しても今回の法改正は普段の実務に対する影響が大きいと感じております。

特に、書面手続のデジタル化に関する事項は今後の弁理士業務に大きな影響があるものと思われます。

というのも特許庁からの郵便物の受取や特許庁への郵便物の発送は意外と多くあるため、これらの書類をオンライン上で受取又は発送できると我々弁理士としても大変ありがたいといった事情がございます。

例えば、特許証等を国際郵便で海外の依頼人に発送するのは少々手間がかかるのですが、特許証等も電子メールで今後報告できることは大変ありがたいのです。

また、昨今のマーケティング手法の多様化の状況を鑑みて、意匠の新規性喪失の例外適用に係る証明書の作成負担が軽減されたことも注目に値します。

さらに、商標のコンセント制度は実務的な影響が大きいものと考えます。アサインバック*等の手段に代わって、他人の先願先登録商標に係る拒絶理由の解消方法のオプションの一つとして活用されていくものと考えられます。

*出願人の名義を一時的に引用商標権者の名義に変更することで他人の先願先登録商標に係る拒絶理由を解消した上で、商標登録後に引用商標権者の名義を出願人の名義に変更する手法

参考資料

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