2022年における世界の知財活動レポートがWIPO(世界知的所有権機関)より発表されていましたので、簡単に本レポートの概要をご紹介したいと思います(本記事は、WIPO IP Facts and Figures 2023の内容に基づいて作成されております)。
世界の特許、実用新案、商標、意匠の出願件数
2022年における世界の特許、実用新案、商標、意匠の出願件数は以下となります。
- 特許の出願件数は、約350万件(前年比1.7%増↑)
- 実用新案登録出願の出願件数は、約300万件(前年比2.9%増↑)
- 商標登録出願の件数*は、約1550万件(前年比14.5%減↓)
- 意匠登録出願の件数**は、約150万件(前年比2.1%減↓)
*商標登録出願の件数は、指定商品/役務の区分(class)の数に基づく。
**意匠登録出願の件数は、意匠の数に基づく(※多意匠一出願の国があるため)。
出願地域の傾向
2022年における出願地域の傾向は以下となります。
- 世界の特許出願件数のうち約67.9%はアジアから出願されている。北米は18.3%、欧州は10.3%
- 世界の実用新案登録出願件数のうち約98.9%はアジアから出願されている。欧州は1.0%
- 世界の商標登録出願件数のうち67.8%はアジアから出願されている。欧州は16.2%、南米は6.8%、北米5.9%
- 世界の意匠登録出願件数のうち70.3%はアジアから出願されている。欧州は22.4%、北米は4.4%
尚、2012年時点では、世界の特許出願件数のうちアジア地域の占める割合は56.1%でした(56.1%(2012年)→67.9%(2022年))。
国別の特許出願件数の分布
上位五庁(中国、米国、日本、韓国、欧州特許庁)における特許出願件数の割合は以下となります。
中国出願の件数が全体の46.8%を占めております。次に米国出願(17.2%)、日本出願(8.4%)となります。
特許出願件数の上位国
特許出願件数の上位国(広域特許機関を含む。)は以下となります。
中国が前年と同様に最も出願件数が多い国となっております(約162万件。前年比2.1%増↑)。
米国は世界第二位の出願件数となります(約59万件。前年比0.5%増↑)
日本は世界第三位の出願件数を維持しています(28.9万件、前年比0.1%微増↑)。
また、インドの出願件数の増加が顕著となっております(前年比25.2%増↑)。一方で、ドイツの出願件数は2.3%減と落ち込みましたが、欧州特許出願の件数が2.6%増となっていることを踏まえると、ドイツ国内出願よりも欧州特許出願を選択する出願人が増えたものと考えられます。また、ロシアの出願件数は13.1%減と大きく減少しております。
次に、特許出願件数の中位国は以下となります。
南アフリカ、インドネシア、トルコの出願件数が大きく伸びていることがわかります。
世界の特許権、実用新案権、意匠権、商標権の数
2021年における世界の有効な特許権、実用新案権、商標権、意匠権の数は以下となります。
- 特許権の総数は、約1730万件(前年比4.1%増↑)
- 実用新案権の総数は、約1100万件(前年比16.6%増↑)
- 商標権の総数は、約8250万件(前年比9.4%増↑)
- 意匠権の総数は、約580万件(前年比8.8%増↑)
- 地理的表示の総数は、約58400件
登録数の上位国
特許権の登録数の上位国は以下となります。
- 中国:約420万件
- 米国:約330万件
- 日本:約200万件
商標権の登録数の上位国は以下となります。
- 中国:4270万件
- 米国:310万件
- インド:290万件
意匠権の登録数の上位国は以下となります。
- 中国:280万件
- 韓国:40万件
- 米国:39万件
中国の商標権・意匠権の登録数が突出していることが分かります。
発明の技術分野
五庁に特許出願された発明の技術分野の傾向は以下となります。
全体的にはコンピュータ技術(ソフトウェア分野)の出願件数が最も多いことが分かります。
- 中国では、1.コンピュータ技術、2.測定、3.電気機器/エネルギーの技術分野の特許出願が多い。
- 米国では、1.コンピュータ技術、2.医療技術、3.デジタル通信の技術分野での特許出願が多い。
- 日本では、1.電気機器/エネルギー、2.輸送機器、3.コンピュータ技術の技術分野での特許出願が多い。
特に、米国では医療技術の特許出願が多い点が注目に値します。また、日本ではコンピュータ技術(ソフトウェア)よりも電気機器や輸送機器等のハードウェア関連の出願がメインであることが分かります(ドイツも似たような傾向となっています)。
※本記事は、WIPO IP Facts and Figures 2023の情報に基づいて作成されております。